孤高の魚
共同生活
「本当に、ごめんなさいね」
帰り道。
ブラウスのフリルをはためかせながら、野中七海は靴音をカツン、カツンとコンクリートに響かせて、くるりと僕の方を振り返って言った。
あれから彼女は、さくらで隣に座ったお客さんの相手をしながら、だいぶお酒が入ってしまっている。
足元がふらついているので、幾分か酔っているようだ。
僕はそれに答える代わりに、フラフラする彼女の腕から、スルリと荷物を抜き取った。
「あっ……あー……ありがとうございます……」
「……飲み過ぎだよ。適当にジュースとか、甘えて貰えばいいんだよ」
珍しく僕は、女の子に注意などしている。
いつもなら面倒なので、女の子がどんなに酔ぱらっても、注意なんかしないのに。
「でも……」
そんな僕の言い方に、彼女は口の中をモゴモゴとさせてから、
「七海には、ボディーガードが、ついてますから」
そう言ってまた、にっこりと笑った。