孤高の魚
そんな僕の予感は、見事に的中してしまいそうだった。
僕の数歩前を、右に左に揺れながら歩く野中七海の小さな背中。
それを黙って追いながら、僕はまた小さな溜め息を吐く。
………
「あそこの、大きな銀杏を、右でしょう?」
「え?」
「……あそこの、銀杏。覚えが……あるもの」
野中七海は呟いて、ふいに立ち止まる。
僕は彼女に追い付くと、銀杏の大木を見上げる彼女の横顔に気がついた。
公園の僅かな街灯に照らされて、彼女の横顔は淡いオレンジ色になって浮かび、長い睫毛の影が頬に落ちていた。
それがとても、繊細で綺麗な形をしている。