孤高の魚



……


………


「……コーヒー」


「え?」


「……コーヒーメーカー、置いて行ったのね。アユの、大事なものなのに」


彼女はすぐに、あのホコリを被ったコーヒーメーカーを見付ける事ができた。
僕は、こんなことならきちんと綺麗にしてあげておくべきだったと、ちょっとだけ後悔をした。


「……いつもここは、コーヒーの匂いがしていた。アユは、コーヒーがないと駄目な人だったもの」


「………」


「……でも今は、煙草の匂いがする……」


「ごめん、それは僕のせいだ」


「うん、わかってる。アユは煙草、吸わなかったもの」



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