孤高の魚
………
しばらくの沈黙の間、キッチンには冷蔵庫のコンプレッサーのブーーン……という音だけが響いた。
僕が吐く煙草の白い煙が、ゆらゆらと蛍光灯に吸い込まれるように上がり、ほろ苦い匂いを漂わせていた。
………
ふいに、彼女が冷蔵庫へと視線をやる。
そこには、例のブルーの手紙があった。
隠しているつもりだったけれど、他の郵便物からはみ出した三角形のブルーがあの手紙である事を、差出人本人はすぐに気が付く事ができたようだった。
「あっ……」
僕がそう言って慌てるのと、野中七海が冷蔵庫に手を伸ばそうとするのは、ほとんど一緒だった。
カサ……
彼女の指の先で、手紙は静かに乾いた音を立てた。