孤高の魚
「コーヒーメーカーね、久しぶりだけど、ちゃんと頑張ってくれたのよ。コンビニのコーヒー豆だけど……うん、美味しい」
野中七海は満足そうに、ボーンチャイナに口をつけて笑った。
そんな彼女の笑顔に、昨日の疲れはほとんど見えない。
「アユニ、今日の予定は?」
軽やかに滑る野中七海の声は、こんな爽やかな朝に相応しい。
「ん……一限から授業に出て、夕方には一度帰るよ。それから、さくらに出勤だ」
「わたしも?」
「もちろん。……それで、君の予定は?」
「君、じゃなくて、ナナミ」
そう言って彼女は、化粧気のない頬を膨らませた。
そのあどけない様子は、さらに僕を和ませる。