シュガー&スパイス
オオカミになる前に
心もとない街灯が、ゆらゆらと長い影を作る。
駅前のゴチャゴチャした喧騒から一転。
アパートに近づくにつれてシンと静まりかえる町。
コツコツと、ヒールの音が左右の塀に反射して聞こえた。
あたしの少し前を行くその背中を見上げる。
のそのそ歩くあたしの歩調に合わせてくれる、長い脚。
……。
会話という会話もない。
別にどってことない。
無言が居心地悪いわけじゃないけど……。
だけど、なんで黙ってるの?
なんか話してほしい。
じゃないと、思い出す。
もうすぐ家に着いちゃうよ……。
そしたらまた1人。
思い出したら、きっと声……聞きたくなる。
なんでもいい。
楽しい話、聞かせて!
グッと顔をあげて、口を開いた。
「……あ、あの!」