シュガー&スパイス
課の人だろうか……。
すごく、綺麗な人だった。
……。
そっか、そういう事だったんだ。
あたし、英司と話合った方がいいって思ってた。
でもそれって、迷惑だったのかも。
7月にもなると、すこし外にいるだけでジワリと汗をかく。
ビルの谷間に吹き抜ける風が、ふわりとスカートを揺らし、髪を撫でた。
見上げると、梅雨だって事忘れちゃいそうなほど青い空が広がっていた。
真っ白な雲が、ビルの窓に映りこんでいて。
その境界線がすごく曖昧な気がした。
もう、夏がそこまで来てる。
「ああ、こう暑いと、ビールが飲みたくなっちゃうよね!」
「だね。今日、行っちゃおうか」
「飲みたーい!」って言いながら、財布を持っていた手をうーんと空に向かって放り投げる。
倫子も、日傘の下から眩しそうに空を見上げた。
……前に進まなきゃ。
止まってたら、あたし、きっとダメになる。
そう自分に言い聞かせて、あたしはさらにグッと空に背筋を伸ばした。