シュガー＆スパイス

……で。

どうしよう……、どうする、あたし！？
前に進もうって決めたのに。

神様は、どうにかしてあたしを困らせたいみたい。




「……」




胸に抱えた書類を、さらにグッと押しこめてあたしはうつむいた。


そして、そのあたしの背後。
少し離れた場所で同じようにエレベーターを待つ男性。




なんでこんなとこにいるの……。


……英司……。




しかも、タイミング悪くふたりッきり。




逃げたい。

でも、ここで動いたら明らかに避けてるって思われるし、なんだか気が引ける。


先にこのエレベーターを待ってたのはあたしなんだから、気を使って別の移動ルートを考えるのは英司の方だと思う。


そう思うと、少しだけ落ち着いて、あたしは小さく息をついた。



落ち着け。

平気。

あたし、もう気にしてないし。

どうしてフラれちゃったのかも、わかったし。


だから、ぜんっぜん大丈夫なんだから。



ブツブツとまるで呪文のように自分に言い聞かせ、やっと降りてきたエレベーターの扉が開くのを待った。



「……」



う、うそー！
誰も、誰も乗ってない！？

な、なんで？なんで？

神様、そんなにあたしをいじめたいんですかーッ