シュガー&スパイス
び、びっくりした。
まさか話しかけられるなんて。
見上げると、小さく微笑んだ英司が、遠慮がちにあたしを見ていた。
「……ほ、ほんと」
それしか言葉が返せなくて、それだけ言うと、あたしはぎこちなく笑みを返した。
「……」
「……」
?
スッと目を細めた英司。
「もう話してくれないかと思った。 怒ってるよな」
「……」
怒ってる?
そんなのはとっくに消え失せてる。
そう思いながら、あたしは英司を見つめた。
こんな会話したくない。
もういいの。
なにも聞きたくない。
だって、英司……
他に大切な人が出来たんでしょ?
そう思っても、あたしは黙ってた。
今更、そんな事言っても仕方ないってわかってる。
でも、あんな別れ方したんだもん。
あたしたち、もう話さない方がいいと思う。
黙ってるあたしを見て、どう思ったのか英司はさらにこう続けた。
「誕生日、来週だろ?……これ」
「え?」
目の前に差し出された小さな箱。
何が何だかわからなくて、あたしはキレイにラッピングされたそれと英司を見比べた。