シュガー&スパイス
……これ、どうすればいい?
家に帰ったあたしは、テーブルの上の小さな箱とにらみ合っていた。
来週末、7月20日は確かに、あたしの24歳の誕生日。
英司と付き合っていた時、一緒に旅行しようって約束していたのを思い出した。
急に言って連休取れないとヤダなって思ってて、ずっと前から有給届を出していた。
英司と別れた今、3日間まるっと予定がなくなってしまったんだ。
でも、今更お休みを撤回する気にもなれてなくて。
あたし、英司にフラれたんでしょ?
なのに、どうしてこーゆう事するのかな。
「……」
『捨てても構わない』
そう言って英司があたしの手の中に、強引に押しこんだ小箱。
あたしはその箱を、チェストの一番下の引き出しにそっとしまった。
あけない方がいい。
むしろ、もらわなかった方がよかったんだけど……。
はあ……。
よいしょと立ち上ると、ちょうど隣の部屋のインターフォンの鳴る音がした。
2度、3度と、何度も聞こえてくる電子音。
時計を見ると、11時を回ろうとしてる。
……千秋、まだ帰ってきてないのかな。
こんな時間にお客さん……もしかしてまた女の人?
サイテー……。
「……」
はあ、ダメダメ。
別に千秋の事なんか、関係ないでしょ。
フルフルと頭を振って、いろんな考えをかき消した。