シュガー&スパイス
頬がカッと熱くなる。
あたしはそれがバレちゃわないように、風で乱れた前髪を整えた。
「おはよ」
英司はすっくと立ち上がると小首を傾げて、微笑んだ。
その仕草にさえ、胸がキュンとときめいちゃう……。
ああ……だめだ。
顔が真っ直ぐに見れないよ。
英司とあたしが付き合い始めたのは、半年前。
同じ会社の上司だった英司。
部下からは尊敬されてて、上司からは信頼されてる。
そんな英司に、皆と同じであたしも憧れていた。
ただの憧れが、恋心に変わったのは……。
英司の担当するプレゼンを新人のあたしが、一緒に組んでやった時、だったな。
それまで事務仕事しかしたことなかったのに、突然呼び出されて、
『仲岡くん、佐伯と一緒に取引に行って来い』
だなんて。
経験もないあたしに、貴重な体験をさせてくれたんだけど……。
その結果英司との距離が縮まったのはよかったんだけど。
帰り道。
まだ雪がチラついていた季節。
あたしたちはあの日、暖かい缶コーヒーを手に、ベンチに座っていた。