シュガー&スパイス
酔っぱらった父が寝てしまったところで、宴会はお開きになった。
変に緊張してたせいで、なんかどっと疲れた気がする。
「はあ……」
開け放った窓のふちにそっと手をかけて、外を眺めた。
そこからは、内海がよく見えた。
風も穏やかで、心地よい波の音と、海風を運んでくる。
あたしが高校生まで過ごしていた部屋は、あの頃となにもかわっていなかった。
この景色も、全然かわってない。
上京して6年。
ここだけ、まるで時間の流れが止まっていたかのようだ。
その時、引き戸が開く気配がして、あたしは顔を上げた。
「……電気もつけないで、どーかした?」
「え?……ああ……」
曖昧なあたしの返事に、不思議そうな顔をした千秋。
「……って、これ菜帆のかーちゃんがやったの?」
そう言って、襖を開けたまま、千秋が目を丸くした。
お風呂上がりで頬をほんのりピンク色に染めた千秋は、首にかけたタオルで口元を覆った。
「これ? これって……」