シュガー&スパイス


酔っぱらった父が寝てしまったところで、宴会はお開きになった。




変に緊張してたせいで、なんかどっと疲れた気がする。



「はあ……」




開け放った窓のふちにそっと手をかけて、外を眺めた。
そこからは、内海がよく見えた。
風も穏やかで、心地よい波の音と、海風を運んでくる。


あたしが高校生まで過ごしていた部屋は、あの頃となにもかわっていなかった。
この景色も、全然かわってない。



上京して6年。
ここだけ、まるで時間の流れが止まっていたかのようだ。




その時、引き戸が開く気配がして、あたしは顔を上げた。




「……電気もつけないで、どーかした?」

「え?……ああ……」



曖昧なあたしの返事に、不思議そうな顔をした千秋。





「……って、これ菜帆のかーちゃんがやったの?」



そう言って、襖を開けたまま、千秋が目を丸くした。
お風呂上がりで頬をほんのりピンク色に染めた千秋は、首にかけたタオルで口元を覆った。




「これ? これって……」



< 136 / 354 >

この作品をシェア

pagetop