シュガー&スパイス



複雑そうに目を細めてる千秋の視線の先を見る。
そこには、真新しい布団がふた組、キレイに並んでいた。



……!!!!



たった今気づいたあたし。
一気に顔が熱くなる。




「え、あっ、これはお母さんが……って、なんかごめん」


もお、お母さん、なにしてくれてんのよぉ!!



「…………イヤ。 俺は、別にいいんだけど」



もう、ほんと最低!
大事な娘をなんだと思ってるの?



茹でタコみたいになって慌てるあたしに「ハハ」って小さく笑った千秋。
そこで、ようやく襖を閉めた。

そんなあたしの隣に並ぶと、窓に両手をついて外を眺めた。




「へえ、ここから海が見えるんだ」

「……う、うん」




お風呂上がりの石鹸のいい香りが、鼻を掠める。
なんだか落ち着かない気分になって、あたしは彼と同じように外を見た。


大きな音で暴れだした心臓を、なんとか沈めたくて。
なにより冷静になりたくて、あたしはパッと顔を上げた。



「……っ」



なにか話さなくちゃ……。

ここで無言になると、また変な感じに……。




「…………」





ザザーン
 ザザーン




遠くで波の音がする。

見上げた先の千秋は、ただ静かに、それを聞いていて。
この状況に戸惑ってたのは、自分だけだと気づかされた。



< 137 / 354 >

この作品をシェア

pagetop