シュガー&スパイス
複雑そうに目を細めてる千秋の視線の先を見る。
そこには、真新しい布団がふた組、キレイに並んでいた。
……!!!!
たった今気づいたあたし。
一気に顔が熱くなる。
「え、あっ、これはお母さんが……って、なんかごめん」
もお、お母さん、なにしてくれてんのよぉ!!
「…………イヤ。 俺は、別にいいんだけど」
もう、ほんと最低!
大事な娘をなんだと思ってるの?
茹でタコみたいになって慌てるあたしに「ハハ」って小さく笑った千秋。
そこで、ようやく襖を閉めた。
そんなあたしの隣に並ぶと、窓に両手をついて外を眺めた。
「へえ、ここから海が見えるんだ」
「……う、うん」
お風呂上がりの石鹸のいい香りが、鼻を掠める。
なんだか落ち着かない気分になって、あたしは彼と同じように外を見た。
大きな音で暴れだした心臓を、なんとか沈めたくて。
なにより冷静になりたくて、あたしはパッと顔を上げた。
「……っ」
なにか話さなくちゃ……。
ここで無言になると、また変な感じに……。
「…………」
ザザーン
ザザーン
遠くで波の音がする。
見上げた先の千秋は、ただ静かに、それを聞いていて。
この状況に戸惑ってたのは、自分だけだと気づかされた。