シュガー&スパイス
まるで絞り出すような掠れた声。
それに誘われるように顔を上げた。
「……」
「……」
流れる前髪の向こう側。
まっすぐに、あたしを見つめる切れ長の瞳。
それは漆黒で、このままだとその中へ吸い込まれそうな感覚になる。
にわかに近づいたふたりの距離。
頬にそっと触れた千秋の手が、そのまま首筋に回って髪をすく。
あたしの反応を確かめるような眼差しに、体の自由を奪われてしまった。
ドキン
ドキン
心臓が、耳元で鳴ってるみたい。
唇が、震えだす。
千秋の、匂いがする。
ドキン
ドキン
苦しい。
息もうまくできない。
拒めるはず。
なのに、なぜかあたしの手も体も、唇も全部あたしのものじゃないみたいで。
前髪が触れる距離。
吐息を感じる距離で、伏し目がちの彼から目が離せなくなっていた。
「……」