シュガー&スパイス
「仲岡、ちょっといいか?」
「あっ、はい!」
やった、助け舟っ
あたしは持っていたカップを片づけると、そそくさと倫子から逃げる。
慌てて給湯室をあとにした。
はあ、危なかった。
倫子って洞察力すごいからな。
あのまま他になにか聞かれてた、あたしどうなってたか……。
ぶるっと身震いして、外で待っていた人を見上げた。
えっ
な、ななな、なんで……
「えっ……」
大声で叫びそうになって、あたしはガバッと口元を押さえた。
そんなあたしなんかお構いなしで、あたしを呼び出した人が笑った。
「探したよ、部署に行っても見当たらなかったら」
はっ?
なんで英司があたしをっ!?
ってまた叫びそうになる。
そう。
目の前には、ビシッとスーツを決め込んだ英司がいて。
まるで何もなかったかのように、あたしに笑いかけていた。