シュガー&スパイス


と、そこで気づく。


真黒なスーツに身を包んだ千秋。
光沢のある華やかなネクタイが、ひと際目を引く。



わわ。



いつもカジュアルな服しか見たことなかったから、まるで別人だ。


似合う……。
服装だけで、こんなにイメージ変わるんだ……。

これなら、本当にいいとこのお坊ちゃまに見えるよ……。





「…………」




マジマジと千秋を眺めていると、千秋もあたしに負けず見つめ返してきた。



な、なに?

恥ずかしいんですけど……。

はっ!


胸元も背中もざっくり開いたドレス。
それを思い出して、慌てて両手を胸の前で組んだ。


ジーッと穴があきそうなほど見つめられ、やっと千秋がその口を開く。




「……へえ。 菜帆って着痩せするタイプだったんだ」



は?

なにそれ!



「ど、どーせ太ってますよっ。ほっといて!」

「……いや、悪くない。むしろ……」



そこまで言うと、意味深にニヤリと笑った千秋。


むしろ?

むしろなにっ!

なんかすっごくむかつくんですけどっ



頬を膨らませて、ツンと顔をそむけた。

そんなあたしを見て「はは」って無邪気に笑う千秋を、なんだか直視出来なかった。





それから、専用の車に乗って、また移動する。

車を走らせること、30分。




やっと到着した先。
そこは……。

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