シュガー&スパイス
「今日これからあるのは、親父の会社の創立記念パーティみたいなもんで。
ほんとは、俺じゃなくて弟が参加すればいいって話だったんだけど、アイツ今日急な仕事で出れなくなったって、さっき連絡入って……」
ああ……。
昼間聞いちゃったのは、それだったんだ。
あれ?
でもなんで……。
「俺も、本当はこんなとこ来たくねぇんだけど。
まあ、アイツが直接電話してきたら、今日だけは特別って事で。
巻き込んじゃってごめん。
このパーティ、パートナー同伴が条件でさ」
「……だからって……」
見る人見る人、みんながこの場を楽しんでいて。
あたしには到底そんな余裕出そうにない。
持っていたハンドバッグをぎゅっと両手で握り締めた。
みんなすっごく綺麗で垢抜けている。
それに比べて自分は……。
「……」
他の人を眺めていたあたしの視界に、いきなり真黒な髪が割り込んだかと思うと、少しだけ釣り上った猫目があたしを覗き込んだ。
そして、ニっと笑う。
「大丈夫だよ。菜帆が一番キレイ」
「……嘘ばっか」
なに言ってんの。
そんなこと言ったって、お世辞だってバレバレ。
ハアアってため息をつくと、ジロリと千秋を睨む。