シュガー&スパイス
ほら!よく見て!
あそこにいる人! テレビでよく見る人じゃあん。
キレイ……。
やっぱりキレイ!
「――…俺には菜帆しか見えてないよ」
「はあ?」
ばっ
ばかじゃないの?
ボンって感じで、真っ赤になったあたしを見て、千秋はいつもみたいに「っはは!」って笑った。
「でさ」
少しだけ真顔になった千秋は、さらにこう続けた。
「……ちょっとだけ嫌な思いさせちゃったら、ごめんね?」
「?」
言葉の意味が理解できずに、きょとんと首をかしげたあたし。
「全部、俺のせいだから」
「え?それって……」
千秋は口角をキュッと上げると、そっとあたしの左手に、自分の手を重ねた。
ドキ!
「さ、行こ!」
「きゃ……」
えええ!
ど、どうすればいいのぉ!?
千秋に手をひかれ、あたしはとうとうホテルのエントランスに足を踏み入れた。