シュガー&スパイス
「おや、千秋くん? 千秋君じゃないかっ」
ひゃ!
大袈裟なほど、驚いた声にビクリと体が震えた。
その声に、視線だけ向ける千秋。
あたしもそれを追った。
見ると、60代くらいの恰幅のいい中年の男の人が、ニコニコと愛想を振りまいていた。
その人の手には、大きなお皿と、たくさんのお料理。
「驚いた!まさか千秋君に会えるとは!
大きくなったね。何年ぶりだ?6年……5年ぶりか」
「……ああ。
お久しぶりです、夏目さん。夏目さんこそお変わりなくお元気そうで」
うわわ。
なんか一瞬、真黒な千秋が出てきた気がしたけど……。
目、全然笑ってないよーな……。
気のせいかな。
もう、いつもの“営業スマイル”だ。
「はは。まあな、見た目は変わらんが、中身は年をとった。
ところで今日は直哉(ナオヤ)君が居ないそうだな」
「はい。海外に行ってます。せっかくみなさん集まって頂いたのに、申し訳ないです」
「わっはは、そーかそーか。彼は忙しいからな。
会社を継ぐにはそのくらいの努力をしなくちゃ。なあ、君もそう思うだろ?」
「――ええ。もちろんです」
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