シュガー&スパイス


「もう1回言って?」

「え、なんで?」



怖いんですけどっ


「だって、ヤキモチ妬かれてるみてぇで、すっげ快感」



そう言ってニヤリ。



ボンって感じで一気に頬が火照る。


「なっな、何言ってんの?そんなわけないじゃん!
……ほら、もう行こ、明日も仕事でしょ」

「えー? 違うのかよー。ヒドイ」


バッと立ち上がったあたしの後を、千秋ものそのそついてくる。
“ヒドイ”と言うわりに、顔がすっごく嬉しそうなんですけど!


ああ、もう……恥ずかしすぎるうう。



ステンドガラスを背にして、扉に向かおうとしたその時、どこからか華やかな音楽が聞こえてきた。



あれ?




立ち止ると、千秋が音をたどるように顔を上げた。



「こんなとこまで聞こえるんだ」

「え? って事は、さっきいたホテルから?」

「風向きかな、そんな離れてないから」




どこかで聴いた事あるような、クラシック。
風に乗って届くそれは、途切れ途切れだ。


思わず聞き入っていると、目の前に手が差し出された。








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