シュガー&スパイス
「こ、こんにちはぁ。友里香さんもランチですか?」
「ええ。 会社が近くなの。あなたも?」
「……はあ、まあ」
あなたのお父様の会社です。
って、言えなかった!
曖昧に言ったあたしなんかお構いなしで、友里香さんは「あ」って何かに気づいた。
「もしかして、旅行の計画中?」
え?
キョトンとして彼女の視線の先を追う。
それは、海の近くで、温泉を兼ねた小さな旅館を特集したパンフレット。
あ、ここの料理美味しそう!
さっきはボーっとしててしっかり見てなかったから、友里香さんに言われ、ようやく気づいた。
「来週から夏休みだし、せっかくなんで今から予約をって思ってるんですけど。空いてるかどうか」
そう言ったのは、倫子。
あたしを見て、目配せした。
「知り合いなの?」って言ってるみたい。
知り合いってゆーか……。
話せば長くなるというか……。
苦笑いするしかなくて、チラッと友里香さんを見上げた。
なにか考える素振りをする友里香さん。
?
それから、パチンと胸の前で手を合わせたかと思うと、キラキラした笑顔であたしと倫子を交互に見た。
「あ、そうだ!
私、いい場所知ってるの。 ここで会えたのも何かの縁だし」
……へ?