シュガー&スパイス
ドキーン!
千秋はまだそこにいて。
あたしから視線をそらせて、首を振っていた。
「あー……ダメダメ」
へ?
つぶやく千秋。
キョトンと首を傾げると、千秋はあたしをチラリとのぞきこんだ。
ドキンって、また反応しちゃう自分に、なんだか焦る。
「千秋?」
って小さく声をかけると、まるで弾かれたみたいに、千秋はベッドに仰向けになった。
「あーもう! 菜帆はずりぃよなぁ」
え、あたし?
は?と口を開けたまま固まるあたし。
「ずりぃずりぃ!ほんっとずりー!」
顔の上に腕を乗せて、そう連呼する千秋。
なにそれ。ずるいってねー……。
今のはどう考えたって、千秋の方が仕掛けて来たんじゃん。
あたし、すっごくドキドキして……。
……はっ!
なにしてんだろっ
帰ろう!
このままここにいると、この繰り返しっぽい!
「じゃ、じゃああたし行くから! お大事に」
そう言ってガバッと立ち上がって、戻ろうとした。
でも……出来なかった。
パシン!
「待って」
しっかりと千秋に手首を掴まれていたから。