シュガー&スパイス
古い木製の扉の奥に、キラキラ光るステンドガラス。
マリア様が見守るその下で
天使だと見間違えてしまったほど、綺麗な男の子に会った。
薄暗い教会の中で出会った彼は、あたしに気付くと驚いたように、そのまあるい瞳を見開いた。
そして、ふわりとほほ笑むとこう言うんだ。
『……やっと会えた』
七色の光が差し込む、神聖な場所。
響くその声色は、ハスキーで、あたしの鼓膜を震わせ
小さな胸にスンと落ちてきた。
『どうして、泣いてるの?』
近づいてきた彼はそっとあたしの頬に触れて、首を傾げた。
見下ろすほど小さな彼のその顔は、まるで女の子のようにも見えた。
……あったかい手
幼く見えた彼の手が、以外にも大きく感じて、胸がトクンって震えた。
そう思った。
どうしてあの時泣いていたのか。
ああ……、そうだ。
あの時は、確か……
引っ越すのが嫌だった。
6歳まで住んでいたあの場所から
幼いながらも離れたくなかったんだ。
だから、家を飛び出して……
道に迷って……
それで、あなたに出会えた……。