シュガー&スパイス
うん、そう。
このロールカーテン意味ないよ?
って、そうじゃなくてぇ
四つん這いのままベッドを降りて、そそくさと千秋から距離をとる。
そこでやっと慌てるあたしに気づいたように、千秋は上半身を起こした。
「……どうしたの?」
「えっ」
そう言ってのんきにあくびをする。
首を傾げた千秋に合わせて、寝癖のついた髪をふわりと揺れた。
ぼんやりと首元をポリポリ掻いていた千秋は、状況を把握したのか少し呆れたように目を細めた。
「……まさか。昨日……俺になんかした?」
えっ!?
ぎょっとして固まったあたしを見て、千秋は吹き出した。
「っはは。図星?」
「ち、ちが…………」
ジーッと、ジーッとは見てたけどもっ
それだけだもん。
変な言い方しないでよぉ
やましいことなんかないんだからっ
ボンって真っ赤になったあたしを面白そうに眺めてから
千秋はのそのそ起き上がった。
「コーヒー飲む? 俺 腹減ったあ」
夏の暑さなんて無関係みたいな、そんな爽やかな顔で笑う千秋。
よかった……もうすっかりよくなったみたい。
ホッと安堵のため息を漏らした、その時だった。
いつの間にか床に転がっていた、あたしの携帯が震えた。
ディスプレイを確認すると、相手は倫子。
もしかして、旅行の事かな?
「……もしもし。あ、倫子?うん、おはよぉ」
受話器越しに聞こえて来たのは、朝からハイテンションな倫子の声。
そして、倫子はとんでもない事を言ったんだ。
「えええええッ!!?」