シュガー&スパイス
「え、佐伯さんも?」
入り口に突っ立ったまま微動だにしないあたしを見て、倫子がすかさず彼に歩み寄る。
でも、英司は倫子の言葉なんかまるで聞こえてないみたいに、ただまっすぐにあたしを見つめていた。
それから、チラリと千秋に視線を向ける。
でも倫子も一緒だから、さほど気にならなかったみたいで、ソファから立ち上がった。
「尾崎達こそどうしてここに?
ここは上条グループの別荘であって、ホテルではない」
首を捻る英司。
はい、ごもっとも。
コクリと頷く倫子。
それから、ここへ来た経緯を、あたしの変わりに英司に話してくれた。
「――なるほど。 仲岡は、友里香と知り合いだったんだな」
「え? ええ、まあ。あたしが知り合いと言うよりは……」
最後はモゴモゴとなってしまった。
なんとなく千秋に視線を移すと、千秋はソファに座って窓の外を眺めていた。
その先を追うと、太陽の光でさらに透明度の上がった海が見えた。
「篠宮くんのお知り合いだったみたいで。
菜帆と彼はお隣同士なんです、縁があってこうなりました」
あたし達を挟むようにして真ん中に座っている倫子は、そう言って、ね!っと相槌を求めてきた。
「そうか、お隣……」
スッと千秋に視線を向けた英司。
その呟き声が千秋に聞こえたかはわからないけど、千秋も顔を上げた。