シュガー&スパイス
「……え、英司っ」
「ちゃんとご飯食べた? 腹が減ったんだろ」
そう言ってちょっとだけ悪戯に微笑んだ英司。
「え、ち、違うよ。 ちょっと疲れただけ。 英司は? どうしてここにいるの?」
うそ!英司に会えるなんてッ
今年の人事異動でフロアが変わっちゃって、それからというもの、英司とこうして社内で会うことは滅多にない。
英司はうちの会社の中でもエリートと呼ばれる部類に入る。
だから、上司にも気に入られていて、信頼とかされちゃってるから、外交がほとんどなんだ。
英司は、ちょっとだけいじけて唇を尖らせたあたしを見て目を細めると、ネクタイをほんの少し緩めながら言った。
「菜帆の姿が見えたから。 ちょっと元気をもらいに」
「え?」
タイミングよく開いたエレベーター。
『上に参ります』なんて機械的な声が聞こえた。
…………。
背中に軽い衝撃を受ける。