シュガー&スパイス

はあ……ちょっと飲み過ぎちゃったかな。

いつも滅多に飲めないシャンパンを、調子に乗って何杯も飲んでしまった。


「ゴクっ」


うま。 うますぎます。
このシャンパン最高……。ワイングラスをジッと眺める。

オレンジ色の照明に照らされて、キラキラと輝くそれをぼんやりと眺める。

そこでふと気づく。

ありゃ、倫子どこ行った?
さっきまで一緒に盛り上がっていた倫子の姿が見当たらない。

千秋は千秋で、どっか行ったままだし。
あたしひとり~?


「こんばんは」


へ?

突然背後で声がして、んあ?と顔を上げた。


ぼやける視界。
急に顔を上げたもんだから、頭の中を回されたみたいにグニャリと視界がゆがむ。

ベンチに座っていたあたしの背後。
そこに背の高い男の人があたしを覗き込んでいた。


「さっきから見てたけど、飲み過ぎだよ」

「……あのぉ」



だれ?

首を傾げる。
このBBQ……違う、ビュッフェに来ている人達をあたしは詳しく見ていない。

だから見上げた先の男を、あたしは知らなかった。







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