シュガー&スパイス


突然のその誘いに、頭がついていかない。

この人誰?

サトシって誰?

なんであたしを誘ってるの?


キョトンとしてるあたしの手首を、サトシと名乗る男にいきなり掴まれた。


ひぇ……
その力の強さに、一気に酔いがさめてかわりに恐怖と言う感情を連れてきた。


「あ、あの。あたし、友達がすぐ戻ってくるんで」

「でも君に拒否権なんてないんだよ?」

「え?」


掴まれた手を離そうと身をよじる。
でも、恐ろしいくらいの力にびくともしない。
サトシはそう言って、その尖った顎をあたしに近づけた。

目が赤く充血してる。
自分も酔っぱらっていて気付かなかったけど、この男も相当酔っている。


「僕のシャンパン飲んだでしょ」


は?なにそれ。

そんなのみんな同じようなの飲んでるじゃん!

ムッとして言い返そうとしたあたしの言葉は次の男の言葉でどこかへ吹っ飛んでしまう。


「これ、10万するんだ。タダで、なんて思わないよね?」

「……」


脅されてる?

てか10万するシャンパンがあるなんて、どうなってるのここは!

サーッて顔から血の気が引くのを感じて絶句しているあたしに、サトシは満足そうにその手に力を入れた。

手からグラスが抜き取られ、男は近くのテーブルに置いた。


ガクガク体が震えて、うまく声が出ない。

どうしよう……!


倫子……

…………千秋っ!

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