シュガー&スパイス

あたしの言葉に、友里香さんは少なからず安堵の表情を見せた。


「そう……」


それだけ小さく言うと、コーヒーを口に運ぶ。


「……美味しい」


友里香さんは、何度も瞬きをしてあたしの淹れたコーヒーを見つめた。





その様子を眺めているといきなり顔を上げた友里香さん。


「ねえ、これどこのブランド?」

「はい?あ……いえ、インスタントですけど……」

「インスタントっていうのね?なんて軽い口当たり……こんなの初めて。買ってこさせよう」

「ええっ?」



ギョッとして目を見開いたあたしをよそに、友里香さんはひとり納得して嬉しそうにまたコーヒーを一口。


えー?

いやいや。それ、特売でいつもより安かったのだから。
すぐそこのスーパーだよ?
インスタント……飲んだことないんだ……。

ま、社長令嬢なら、そう言うもんなのかな。
あたしには未知の世界……。


へえ~……

なんて物珍しい物でもみるみたいに目の前の友里香さんを眺めていると、ふいに友里香さんの瞳があたしを捕えた。



「ね、ね。千秋は? いないの?」

「え?」

「一緒に住んでるんでしょ?」


ええええ?


持っていたカップを落としそうになる。

友里香さんはあたしの顔を真っ直ぐに見つめたまま、ニコニコとしていた。


「あの、部屋は隣ですけど、一緒に住んでないです!」

「あら?そうなの?この前千秋は一緒に住んでるって言ってたけど」


は?

アイツ、何考えてんの?

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