シュガー&スパイス

眉間にシワを寄せたままのあたしなんかお構いなし。

友里香さんは、なぜかとても楽しそうだ。


「それにしても、この部屋に一人暮らしって寂しくないの?」

「え? 別に……」


そりゃあ、人恋しい夜もあるけど。
別にひとりで飲むお酒嫌いじゃないしー。


「へえ。小さいけどキッチンもちゃんとあるのね」

「まあ」

「菜帆ちゃんお料理するの?」

「……それなりに」

「すごーい!尊敬しちゃう」

「……それなりです」

「じゃあ今日は泊めてもらえる?」

「はあ……」



って、えっ!!!?

思わずガバっと顔を上げる。

目の前のお嬢様はいたって普通。

手にしていたブランドのボストンバッグを手繰り寄せ、中をゴソゴソと探り始めた。


「わたしね?こう見えてお友達の家でお泊まり会ってした事ないの。あ、ほらちゃんとパジャマなるものを持ってきたのよ?なんて言うの?パジャマパーティ?」

「ちょ、ちょ、ちょっと待っ……。とま……?」


あたしの動揺なんて気にもとめず、友里香さんはその中から携帯を取り出し、どこかへ電話をかけだした。



「……あ、もしもし?ええ、わたし。今からあれ頼める?そう、手配どうりにね」



それだけ言って、さっさと電話を切った友里香さんは、また鞄にそれをしまうとようやくあたしに視線を戻す。



「え? なにか言った?」

「……」



金持ちって……。





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