シュガー&スパイス
サヨナラの合図
「はあ……」
いつもの給湯室。
あたしはコーヒーカップをいくつも並べて、またため息をひとつ。
「はああ」
「ねえ、菜帆?」
「んー?」
先にいて、お茶を淹れていた倫子が半ばあきれ顔で覗き込む。
「結局さ、友里香さんと何を話したの?」
「なにって……なんだろう?」
もうわけわかんない。
あの日、ベロベロによった友里香さんは、すぐに寝てしまった。
次の日も、すぐに家を出て行ったし、本当は何を言いたかったのかな?
英司を諦めて……かぁ。
友里香さんが心配するようなことは、ないはずなんだけどな。
でも、そこでふと思い出す。
夏休み。
沖縄であたしを助けてくれた英司の事。
心配して走ってきてくれて、抱きしめられたとき、あたしすごく安心したのは確か。
もし、英司がまだ迷ってるとしたら
あたしに出来ることは、ひとつしかない。
だって
あたしの気持ちはもう動き出してしまったんだから。