シュガー&スパイス
薄い壁の向こう側
「はあ……なんでこんなことに……」
目の前には山積みにされた伝票たち。
急きょ、課長に残業を頼まれてしまった。
倫子は外せない用があると、定時に帰ってしまった。
時計に目をやると、すでに7時。
窓から見えるビル街は、すでに光をともしていた。
英司との待ち合わせは時間は、8時。
絶対間に合わない。
明日も仕事だから、早めに会いたかったのに……。
ジトっと目の前に書類を睨んでから、力なく肩を落とした。
メールしとこう……。
英司からは、すぐに返信が来た。
あたしよりもきっとはるかに忙しい英司。
案の定、残業があるようであたし達は予定を繰り上げて会う事になった。