シュガー&スパイス
「あまーい!」
えっ
いきなり目の前に指が迫ってきて、小さく身を引いた。
友里香さんは、ビシッとあたしを指差して頬をぷうっと膨らませた。
「千秋ってああ見えて押しに弱いの、知ってるでしょ?」
押しに弱いの?
知らないんですけど!
あたしの知る千秋って、飄々としてて、気まぐれで。
チャラくて、やたらと迫ってきて。
……でも肝心なことはしなくて。
読めないヤツ……。
押したら……折れるの?
「……」
黙ってしまったあたしに、友里香さんは「あれ?」って2、3回瞬きをして咳払いをした。
「とにかく。待ってるだけじゃダメ!いい?千秋の気持ちにははっきりしてるんでしょ?なら、菜帆は迷う事ないじゃない」
え?
や……はっきり気持ちを言われた事はないけど……。
なんかあやふやと言うか、うまい具合にたぶらかされてると言うか。
うーん……。
「そうだよ、菜帆。会えなくて寂しいって、千秋君に言ってみなよ?」
「……」
倫子の言葉に、友里香さんはウンウンと何度もうなずいて見せた。
……ふたりとも。
簡単に言ってくれるよね。
素直になるって、なんかものすごく難しい。
大人になるにつれ、色んな事にがんじがらめになってる。
そんな気がしていた。