シュガー&スパイス

はあ……。
なんか変な汗かくし。

ほんと。
倫子や友里香さんが言うように、もっと素直になれたら
どんなに楽なのかな……。


そしたら、こんなふうにいきなり美容院に押かけるなんて事しなかったもん。

力尽きて、しゅーんとしてると、サッとケープがはがされて急にヒヤリとした空気があたしを包んだ。



「……一回流します。こちらへどうぞ」

「……」



クルリと椅子を回転させられて、ひざ掛けをとった千秋。


チラ。

う……全然こっち見てない。

泣きそうかも。

空回りしてる自分自身が虚しくなってきた。







間接照明だけの薄暗い個室。
そこにはシャンプー台がふたつ。
利用客にリラックスしてもらおうって意図かもしれないけど。
ちょっと暗すぎない?

アロマ加湿器だけが静かにその光を変えていた。


――カタン


視線も合わせないまま、個室の引き戸をギリギリまで閉めた千秋。


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