シュガー&スパイス


……無言。

なんでぇ?
そんなに迷惑だったのかな?

千秋は、あたしの心にズカズカと土足で踏み込んでおいて。
いざ千秋に行こうとすると、それを呆気なく振りほどくの?

あたし……もしかして。
遊ばれてた?


防水のケープを施され、少し冷たい千秋の指があたしの首をかすめて、ビクッと震えた。
その、さも迷惑そうな声色に、自分でも驚くくらい動揺してる。


「……」


黙ってると、「椅子倒すよ」って声がして自動でゆっくりと体が倒れていく。


なんか。

あたしばっかり会いたかったみたい。
あたしばっかり、千秋を意識してるみたい。

さっきから、小さなその仕草ひとつでビクビクしてる自分が悲しい。


千秋は、あたしに目隠しをするためにタオルをかざす。

……ああ、もう。
なにしてんのあたし……。

素直になれたら、違うのかな。
それともそれすら、ウザがられちゃうのかな。


ウジウジの情けないあたしをかき消すように、ギュッと目を閉じた。


でも。

そのまま千秋の手が止まった。


「……」

「……何がしたいの?」


えっ

ダメ押し?

やっとしゃべったと思ったら最初の一言それ?

ムッと見上げたあたしが見たのは、ジトッと目細めて呆れ顔……。

なんだけど……。




あれ?


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