シュガー&スパイス
泣きたい気持ちを抑えて、あたしは必死に心を落ち着かせる。
平常心、平常心。
ここはもう、何事もないみたいにやり過ごそう。
それで、よく考えてからまた千秋と話そう。
「簡単に言うと、菜帆は俺に会えなくて寂しかったって事じゃん?」
「……」
ハハハ、て。
笑って言うの?それ。
笑いごとなの?
フルフル震える唇をキュッと噛み締めたあたしを見て、今度は千秋が固まった。
「……マジ?」
カアアアって体中から火が出そう。
熱くて、熱くてわけがわかんなくなる。
「……、……。
な、なによ、だったらなんなの?
悪かったわね、心狭くて!だって千秋全然会いに来ないんだもん」
「あ――ごめん。仕事忙しくて」
「へえ? それでも他の子には時間作ってあげてるもんね」
「他の子?」
「アパートにまで来てたの見たよ?ショートの可愛い子」
……。
止まれあたしの口~!
そもそも。
そもそも、会話おかしいから。
あたし達、付き合ってないんだから。
「ショート?ああ、あれここのスタッフだよ。ほらナガシマって子」
「ナガシマさん……」
「最近入った子なんだけど、俺が昔使ってた教材で勉強し直したいって聞かなくてさ。言いだしたらその日に欲しいってアパートにまで押しかけて来た事あったけど……それかな」
ソレだ……。
あの子、自分でも言ってたか……。
思い立ったら即行動だって……。
アハハ……。
穴があったら入りたいです……。