シュガー&スパイス
―――ピンポーン
「……はい?」
「あ、あたし。菜帆です」
「え、菜帆?ちょっと、待って」
インターフォンの向こう側が、少しだけ戸惑ってるのがわかる。
それもそうか……。
あれから2時間はたってる。
こんな遅い時間に、あたしバカだってわかってるけど。
でも、言いたくて。
……ガチャ!
中からバタバタと足音がして、勢い任せに扉が開いた。
「……どうしたの?」
お風呂に入ってたのかな……濡れたままの髪から、ポタリと滴が落ちた。
上気してる頬が、なぜか色っぽい。
これも、深夜に近い時間だからだろうか。
「誕生日おめでとう」
「え?」
「よかった、どうしても今日中に言いたくて」
「……」
照れくさくて、ハハハって笑ったあたしを見て、千秋はその瞳を見開いた。
え、まさか。
あの情報も嘘?
千秋の珍しいものでも見るみたいな、その顔にいたたまれない気持ちになる。