シュガー&スパイス

ほろ苦いビールと甘ったるいケーキ。
なんともアンバランスな組み合わせ。

だけどあたし達は、それをつまみながらお互いの事を話した。
と、言うよりもほとんどあたしがペラペラと話してただけなんだけど。


家族の事。
仕事の事。
倫子の占いの事。
友里香さんや英司の事。

千秋はあたしのくだらない話に、穏やかに相槌をうってくれて、時々楽しそうに笑ってくれた。


だって、今……ここでの沈黙が怖いんだもん。

黙っちゃったら、どうしていいのかわかんない。

切り上げ方も、わからなかった。


「……」

チラッと千秋を見上げた。
ゴクゴクと上下する喉仏が、やたらと落ち着かせない気分にさせた。


ああ、もう。
あたし、なにやってんだろ。

時計に視線を送ると、すでに11時をまわりもうすぐ12時を迎えようとしていた。


そろそろ帰った方がいいよね。
あたしは明日休みだけど、きっと千秋は仕事だろうし。


――……コト

ビールを飲み干してしまったのか、千秋が静かにテーブルに缶を置いたのを見て、あたしは顔を上げた。


「あの、今日は突然来ちゃってごめんね?」

「ん?あー、全然いいよ。でも前みたいなのはやめてほしい」



え?

そう言って千秋は頬杖をついてあたしを覗き込んだ。

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