シュガー&スパイス
そっと視線を上げると、ガラス張りになっているお店の外を、たくさんの人が行きかっていた。
それは、ここへ来た時と何も変わらない。
――……けど。
ガラス越しに見える店内には、すでに数組のお客さんしかいない事に気付く。
「……」
こんな時間だもん、きっと英司、残業が長引いてるんだ。
連絡……できないくらい、忙しいんだよね。
―――帰ろう。
あたしは携帯に視線を落として、そっとそれをバックに押し込めた。
お店を出ると、5月の風が頬を撫でる。
顔を上げて、ビルの谷間から夜空を見上げた。
重たい雲のじゅうたんが、星たちを隠してしまっていた。
「……」
『些細な事ですれ違い』
倫子の星占い……。この事だったのかな。
……、偶然、だよね。
だけど、そんなあたしの意思とは反対に、倫子の言葉が頭の中から消えなかった。
運命の歯車は回りだしてる
全部、必然だよ