シュガー&スパイス
「あー……もう……」
吐き出されるその声に、あたしは大人しく抱かれる。
ドクンドクンって鳴ってるこれは、あたし?
それとも……千秋の?
ギュウウって苦しいほどきつく抱きしめられて、千秋がそっとあたしを覗き込む。
コツン
額をくっつけたまま、眉間にシワを寄せた千秋は口角をクイッと持ち上げた。
ドキン
「……今更。 ジョーダンって言っても遅いんだからな」
あたしの頬を包む彼の手が、ジワジワ熱い。
それだけで溶けちゃいそうだよ……。
怒ったようにそう言う千秋に、なんだかおかしくて。
思わず笑いそうになる。
緩んだ口元で、あたしはその手にそっと自分のを重ねた。
「……うん」
言った瞬間、ジワリと視界が滲んだ。
真っ直ぐにあたしを見つめていた千秋の瞳が、スッと細められた。
まるでスローモーションのように近づいて、ふわりと触れた唇。
想像してたよりもやわらかくて、ちょっとだけカサついていた。
それはすぐに離れて。
そして。
今度は確認するように、角度を変えて深く重なる。
ずっと。
ずっと前からこうなる事を望んでいたのかもしれない。
あたし達は息をするのも惜しんで、お互いを求めた。