シュガー&スパイス
ホントに。
本当に素直にそう思えた。
英司には、幸せになってほしい。
友里香さんと一緒に……。
幸せそうに笑う友里香さんを見ていたら、心の中がポッと暖かくなった。
コツン
コツン
心もとない街灯が、あたしの影をユラユラ映す。
人通りはまだあるものの、やたらとヒールの音が耳に付く。
少し酔ってるのかも。
アルコールで温まっていた体は、冷たい風のせいですっかり冷え切ってしまっていた。
帰ったら湯船にお湯はって……。
たまには、アロマなんてたいちゃおっかな。
それからパックして……。
ネイルも塗りなおして……。
見慣れたアパートが見えてきて、あたしは鞄の中に手を突っ込んだ。
鍵……鍵……
毎回探す……。
それぞれ小さなポーチに入れて整理してるはずなのに、いつの間にかグチャグチャの中身にウンザリする。
ゴソゴソ
とうとう立ち止まって鞄の中を覗き込んだ、その時だった。
ただでさえ頼りない街灯の明かりが、ふっと消えた。
ん?
顔を上げると、そこには知らない男の人があたしを覗き込んでいた。
彼の後ろには、オレンジの光を灯す街灯。
その人のせいで、あたしの手元の明かりが遮られてる。
……だ、誰?
顔、よく見えないんだけど!
もぉ、鍵どこ~!?
「あの、コレ落としましたよ?」
へ?