シュガー&スパイス


ちょちょちょ。

ちょっと待って!



ええーと?

少し冷静になって言葉を探す。


「……。あの。待つのはあなたの自由ですから、どうぞご自由に」


あれ?

自由って2回も言っちゃった。

でも、いいや。

そう。待つのはあなたの勝手。

もうそろそろ帰ってくるんじゃないかなぁ?


美容師さんは、自分の技術磨くために遅くまで頑張ってるんだもんね。

最初はただのチャラ男だと思ってたけど、千秋は千秋なりに自分の決めた道を進んでる。


あたしみたいに、ただ毎日を過ごしてるわけじゃないんだよね。


最近、帰りが遅くなって疲れてる千秋見てそう思う。
すごいなぁって。

それから、うらやましいとも感じるんだ。



「はい。ありがとうございます。ああ、よかったあ。あなたに逢えて」

「え?ああ、いえあたしは何も」


安堵のため息を漏らしながら、ニコリと微笑んだ彼にハッとした。


「じゃあ、」


ペコっと頭を下げて、階段を上がる。
そして鍵を開けて、玄関を開けた。


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