シュガー&スパイス
ナオヤ?
ナオヤって誰だっけ……。
どこかで聞いたような……。
キョトンとしていると、今度はナオヤと呼ばれた人が、固まったままの千秋に駆け寄った。
「良かった!やっと会えた……兄さん」
えっ
に、兄さん?
……てことは、この人が。
「なんでこんなとこに、つか何で知ってんだ?」
「友里香さんに会って」
「……クソ。アイツ」
涙まで浮かべて再開を喜んでいる弟直哉君。
それにくらべて千秋ときたら、眉間にシワを寄せて明らかに不機嫌だった。
「兄さん、あの話ちゃんと考えてくれた?きっと父さんだって、」
「直哉」
ツカツカとあたし達の間を通り過ぎる千秋。
彼の後を追うように話す直哉君を、千秋は遮った。
「……。でも兄さん、明後日は必ず来て欲しい。必ず」
そう言って直哉君はくるりと千秋に背を向けた。
「菜帆さん、今日は突然すみませんでした」
「あ、いえ……」
話について行けず、ただ突っ立たままのあたしに、直哉君は律儀にも頭を下げる。
慌ててあたしもそれに応えると、ニコッと微笑んでそのまま階段を降りて行ってしまった。
?
なんだったの?
遠くなる足音を追いかけていると、突然手首を掴まれた。