シュガー&スパイス

リゴーン
 リゴーン


「おめでとう」

「お幸せに」


純白のドレスに身を包んだ友里香さん。
その隣には、同じように純白のタキシード姿の英司。

真っ赤なヴァージンロードを歩くふたりは、おとぎ話から飛び出したお姫様と王子様さながらで。
その教会は、とても立派でまさにお城のようだった。


「なんだっけ、ほら。魔法の映画の」


ふたりに拍手を贈りながら、倫子がポツリと言った。

あ、そっか。
映画に出てきた、あの魔法学校の……。

そこに似てるんだ。
この教会。


「いいなぁ、結婚するならこんなことで挙げたいよね」

「憧れちゃうねぇ」


倫子の言葉に、素直にうなずいた。


確かに。

女子なら一度は夢に見ちゃうよ。


次々にかけられる祝福の声に、薄く微笑んで応えていたふたりが、一番後ろにいたあたし達のところまで来た。


「すっごく綺麗です、友里香さん」


倫子が声をかけると、友里香さんと英司があたし達に気付いた。


「ありがとう、来てくれたんだね」


まるで雪のように真っ白な頬に、ピンク色の薔薇が咲く。

でも。

今まで幸せそうに笑っていた英司の表情が、一気に変わる。


「……菜帆? なんでここに……」



へ?


立ち止まった英司につられて、友里香さんの足も止まる。

え、え?

意味がわからずに、でも眉間にシワを寄せた英司から目が離せずにいた。


そして、英司はこうつぶやいたんだ。


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