シュガー&スパイス
「……今日は婚約パーティだって……」
え?
婚約?
って、なにそれ。
さらにパニックになったあたしは、ただポカンとするだけで。
友里香さんがハッとして英司を見上げた。
「それって、直哉くんじゃないの?」
「俺は篠宮グループの長男って聞いた。今日、その発表があるからって」
「私、パパからは何も聞いてないわ。 何かの間違いじゃ……」
「いや。確かだよ。社長が話してるのを聞いたから」
ちょ……ちょっと、待って?
話が……見えない。
控えていた挙式のスタッフに促されて、ふたりは再び歩き出す。
……。
なんだったんだろう……。
婚約?
誰が?
……篠宮の長男って……、まさか千秋が?
黒塗りの車に乗り込んだ、最後の顔を思いだす。
何か言いたそうにしていた。
千秋は知ってた?
ドクン
胸の奥が、鈍く鳴る。
ドクンドクン
一度鳴り始めたその音は、次第に大きくなって、今にも飲みこまれそうになる。
ドクンドクンドクン