シュガー&スパイス
千秋が結婚しちゃう……。
――また?
千秋も……あたしの前からいなくなるの?
世の中、どうにもならない事がある。
それは嫌ってほど思い知った。
目の前が暗くなる。
視界が一気に狭くなっていく。
ドクン ドクン
気が付けば、体が小さく震えていて。
あたしを呼ぶ倫子の声にも、気付かなくて。
でも……。
「菜帆っ!」
ハッとして顔を上げると、何かがあたしめがけて降ってきた。
咄嗟に両手を出して受け取ると、それはブーケだった。
友里香さんが持っていた、青い薔薇のブーケ。
「行って!きっと間に合うわ」
友里香さん……。
まだブーケトスじゃないのに……。
彼女の後ろの方で控えているスタッフが、信じられないと目を見開いている。
英司もそんな友里香さんを見ておかしそうに微笑んでいる。
参列者から一気に視線を浴びる。
全身に痛いほどそれを感じるのに、今のあたしにはそんなのどうでもよくて。
でも、足は一歩も踏み出せない。
だって……。
だって、あたしが行っても、きっとどうにもならないよ。