シュガー&スパイス
ジッと手元のブーケに視線を落としていると、その手に倫子が触れた。
「菜帆、青い薔薇はね? 夢叶うんだよ?」
「……夢……」
丸いシルエットのハニーブラウンのボブが、ふわりと揺れた。
「不可能を可能にする。それが青い薔薇なの」
「倫子……」
それから倫子は、思い出したようにふふっと笑った。
「――ね。前にあたしが言った占い、覚えてる?」
占い?
まだ英司と付き合ってた頃の事かな?
えっと……
首を捻ったあたしに、倫子はさらに続けた。
「あの時、菜帆に怒られちゃって言えなかったけど」
「あ……」
そうだ。
倫子は、英司の異変に戸惑うあたしに“何か”を伝えようとしてくれてた。
でも、あたしは怖くてそれを止めちゃったんだ……。
「ラッキーアイテムは、青いもの」
え?
ラッキーアイテム?
キョトンと瞬きを繰りかえすあたしを見ておかしそうに笑うと「ほらこれも青」ってブーケを指した。
「菜帆の運命は必然的に動き出していた。でもね?悲しいだけじゃなくて、そこから希望を見出してくれるなにか青いモノが必要だったの。今も変わってないよ?
だから……大丈夫」
青いもの……青い、薔薇……。