シュガー&スパイス


ジッと手元のブーケに視線を落としていると、その手に倫子が触れた。


「菜帆、青い薔薇はね? 夢叶うんだよ?」

「……夢……」


丸いシルエットのハニーブラウンのボブが、ふわりと揺れた。


「不可能を可能にする。それが青い薔薇なの」

「倫子……」


それから倫子は、思い出したようにふふっと笑った。


「――ね。前にあたしが言った占い、覚えてる?」



占い?

まだ英司と付き合ってた頃の事かな?

えっと……


首を捻ったあたしに、倫子はさらに続けた。



「あの時、菜帆に怒られちゃって言えなかったけど」

「あ……」


そうだ。

倫子は、英司の異変に戸惑うあたしに“何か”を伝えようとしてくれてた。
でも、あたしは怖くてそれを止めちゃったんだ……。


「ラッキーアイテムは、青いもの」


え?
ラッキーアイテム?

キョトンと瞬きを繰りかえすあたしを見ておかしそうに笑うと「ほらこれも青」ってブーケを指した。


「菜帆の運命は必然的に動き出していた。でもね?悲しいだけじゃなくて、そこから希望を見出してくれるなにか青いモノが必要だったの。今も変わってないよ?
だから……大丈夫」



青いもの……青い、薔薇……。


< 325 / 354 >

この作品をシェア

pagetop