シュガー&スパイス
「……。あたし、行ってくる!」
もう一度、そのブーケを胸に抱いて、あたしは顔を上げた。
倫子は、コクリと力強く頷いて見せた。
「ありがとう、倫子」
「迷ったらダメだよ?答えは菜帆の中にあるんだから」
「うん」
ピンヒールで地面をタンと蹴って教会を後にする。
英司と友里香さんに向けられた拍手を背中に受けて、あたしは押されるように走り出した。
空は、薄い雲を広げ始めていた。
もしかしたら雪が降るのかもしれない。
ドレスを着て全速力で走るあたしは、きっとすごく滑稽だ。
でも、それでも構わない。
急がなきゃ!
今度こそ、間違えないために。