シュガー&スパイス

あたしの声にハッとしたように顔を上げた彼は、なぜかソワソワとして店内の様子を伺っていた。


なにしてんの……?

首を捻ったあたしを見つけた直哉くんの表情が一気に和らぐ。


えっ


その顔にビクリと反応するあたしの手をガッと掴むと、彼はそそくさと入り口から見えない所までやって来た。


み、見つかったぁ!

しかも、なに?連れ戻される?
邪魔しないでって?

直哉くんはもしかして、自分が社長になるのが嫌なんじゃ……。

物陰に隠れるようにした彼をオズオズと見上げた。


千秋に劣らない長身。
前は夜でしっかりと顔はわからなかったけど。

目鼻立ちのはっきりした顔は、かなりのイケメンだ。
たれ目の大きな二重。

長いまつ毛の奥の瞳は、まだお店の中を覗き込んでいた。


それから、はあと大げさなほどのため息をつくと、直哉君はガシっとあたしの肩を掴む。


ひぇえええ!
こ、怖いいっ

思わずギュッと目を閉じる。


「良かったっ、来てくれた!」

「ごめんなさいっ、でもあたし、」



……。


ん?


パチッと目を開けると、心底感激してますって顔の直哉君があたしに視線を合わせるように腰をかがめた。


「菜帆さんが来てくれなかったら、俺が乱入するところでした」

「はい?」



意味が……。


首を捻るあたしなんかお構いなしで、直哉君はさらに続ける。


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