シュガー&スパイス
「兄さんああ見えて、遠慮しがちって言うか。
変に人の気持ちを先読みする方だから。
もしかしたらこの縁談が成立しちゃうんじゃないかって心配してたんです。
昔からそうなんです。
何故かはわかりませんが、父に気を遣ってると言うか……僕と距離をとってると言うか。
あ、昔と言っても母が亡くなる前まではよかったんです。でも、母がいなくなって、僕が親戚から色々言われるようになって……」
「ちょ、ちょっと待って!」
えーっと……。
千秋がみんなに気を使って?
直哉くんがみんなから色々言われるように?
ダメだ……
全然話が見えない……。
箇条書きにして、順をおって説明お願いします。
まくし立てるように言われて、頭はパンク寸前。
直哉くんはああ言ったものの、まるであたしを見ていない。
そんな彼を落ち着かせようと、今度はあたしは彼の肩をガッと掴み返した。
「直哉くんっ」
背の高い彼の肩に手をやるって結構体勢的につらいけど、でも。
キョトンとした彼は、大きな目を瞬かせた。
その時だった。
「それでは後程」
「18時にお待ちしています」
お店の入り口でそんな会話が聞こえて、あたし達はピタッと壁に張り付いた。
そろーりと様子を伺うと、恰幅のいい背の高い中年の男の人と、それから真っ赤な振袖を着た小柄な女の人が見えた。
続いてお店から顔を出したのは……。
「兄さん……」